【分子】

 ドルトンは,物質は粒子の集まりであると考え,その粒子を原子と呼んだ。そして,「原子はそれ以上分割されない」,「原子は新しく生成したり,消滅したりしない」といった原子の性質をまとめた。

実際に,鉄や銅といった〔 金属 〕元素だけできている物質や,塩化ナトリウムや炭酸カルシウムといった〔 金属 〕元素と〔 非金属 〕元素からできている物質は原子で説明ができる。

「塩化」は「塩素と結合した」の意味。塩化ナトリウムは塩素(非金属元素)とナトリウム(金属元素)からできている。その他,「酸化」(「酸素と結合した」の意味)などがある。「~酸」は非金属の元素からできている物質のなかまで,「炭酸」は「炭酸と反応した」の意味。炭酸カルシウムは炭酸(非金属の元素からなる)とカルシウム(金属元素)からできている。その他,「硫酸」,「硝酸」,「リン酸」などがある。

 

ところが,物質の中には原子では説明ができない物質も存在する。はじめは,水素,酸素,水(水素原子と酸素原子からなる物質),二酸化炭素(炭素と酸素からなる物質)などの〔 非金属 〕元素だけでできている物質は,それらが気体の状態であるときの反応(性質)を原子で説明することができなかった。そこで,イタリアの物理・化学者であるアボガドロ(17761856)は,水素,酸素,水,二酸化炭素などは,「いくつかの原子が結合して存在している」と考えた。

 現在では,ドルトンとアボガドロの両方の考えから,水素,酸素,水,二酸化炭素などの物質は,いくつかの原子(非金属の原子)が結合して新たな粒子となり,その粒子が多数集まってできていることが分かっている。この原子と原子が結合してできた粒子を〔 分子 〕という。

 

 

【代表的な分子】

 結合する原子の数や種類によってさまざまな分子ができる。

 
 

分子の名前

   H2のような単体(1種類の元素からなる物質)の分子は,元素名をそのまま物質名にしている。H2Oのような化合物(2種類以上の元素からなる物質)はそれぞれに名前を付けている。

 

  なぜ水分子はH2OOH2ではないのか。

   水素分子はH原子が2つなのでH2と書く。H2Oなど複数の種類の原子からなる場合,元素にはSiCPNHSIBrClO(一部だけ表示)の優先順位があり,優先順位の高い方を先に書く。HOではHの方が高いのでHを先に書く。

  

  なぜ水分子はH2つでO1つなのか。

原子と原子の結合は原子と原子が手をつないでいるのと同じイメージで考えられる。原子の手の数はそれぞれで決まっており(周期表の縦の並びは同じ手の数の元素が並んでいる),主なものをつぎに示す。(左下)ただし,元素によっては手の数が変わるものもある。

 
 

原子どうしは手が余らないように結合するので,例えばCO2は手が4本のC2本のOなので,OCOと手をつなぐ。そのためC原子1つとO原子2つで結合する。(右上)

一酸化炭素COのように手を余らせている物質もあり,そのような物質は他の物質と反応しやすい。)

その他,二酸化硫黄SO2,二酸化窒素NO2がある。

 

例題 次の分子を例にならって図示せよ。

 ① 塩素分子Cl2  ② 硫化水素分子H2S ③ 二酸化硫黄分子SO2 ④ 過酸化水素分子 H2O2

 
 
 

【物質と原子,分子のまとめ】

 これまでに物質をつくっている粒子には原子と分子があることを学んだ。ここでは,物質と原子,分子をまとめておく。

 
 

      例外もあり,炭素,硫黄,ケイ素,二酸化ケイ素および「~アンモニウム」と呼ばれる物質は非金属の元素だけであるが,原子が集まってできている。